キャラクターが喋り、1つの大きな物語が動いていくアニメーション映画が多かったディズニーの作品の中にも、音楽をバックに多彩なキャラクターたちが生き生きと動き回って描かれている作品もあります。
その中でも特に功績が大きかったと言えるのは、やはりファンタジアではないでしょうか。
当時では珍しいクラシック音楽とアニメーションの融合に見事成功し、しかもストーリー性のあまり見えない特殊なクラシックを映像化するという挑戦への成功は、アニメーターたちの間でも大きな話題となりました。
この作品から50年が経った2000年には続編ともなる「ファンタジア2000」も登場し、ディズニーの人気作品の一つとして大きな進歩を成し遂げた映画でした!
今回は、そんなファンタジアの魅力を、内容の紹介とともにこの記事でたっぷりとお見せしていきたいと思います!
※今回は筆者の希望により「内容紹介」とさせていただきます。この作品を言葉で表すのは愚問だと思いますので、記事を見た人が作品を見たくなるような紹介を心がけたいと思います!
ファンタジアはどんな作品?
ファンタジアは、1940年にアメリカで公開された映画タイトルで、オーケストラによるクラシック音楽をバックとしたアニメーションで綴られる8つの物語と、それに付随した小話や休憩などを挟む、ひとつのコンサートに参加しているような感覚になる特殊な作品です。
全編のクラシック音楽の収録は、すべてレオポルド・ストコフスキー指揮によるフィラデルフィア管弦楽団の演奏によって行われています。
音のまとまりを重視し、重厚かつ柔らかな音階を楽しむことが出来るフィラデルフィアの演奏は、今でもCDや様々な国でのイベントで演奏されるなど、今でもその人気は絶えないですよね。
そんな皆さんの上質な音楽をバックに流れるのは、ウォルト・ディズニー率いる最強のアニメーターたち。
用いられるクラシックに本来付けられたストーリーをすべてとっぱらい、「音楽を映像にするとどんな形になるのか?」という純粋な思考の元に作られたのが、このファンタジアです。
ステレオ技術にこだわった、これまでにない音楽体験
画像参照:ディズニー公式サイトより
この映画は、当時上映されていた作品の中では初めて「ステレオ効果」が利用された映画で、後の世代につながるステレオ再生方式が世界で初めて一般的に導入され実用化された、まさに歴史的な映画なんです。
前方3チャンネル(左、中央、右)のミキシング音声を取りやめ、より立体感が出るように複数のスピーカーを劇場内に配置し、各チャンネルのスピーカーごとに違う音を出して、音の立体感を出したことにより、今となっては一般的になっているサラウンド音声を生み出したのです!
とはいえ、当時は上映する全ての映画館で同じ機材を全部用意しなくてはならないという、資金面および時間的な問題にぶち当たってしまい、最終的にはすべての劇場でこの音響効果を再現するのは難しくなってしまいました・・・。
しかし、後にその技術が全面的に映画館に標準装備されるようになり、1950年代半ばにはサラウンド・ステレオにてリバイバル上映され、クラシック音楽をコンサートで聞く感覚をより多くのゲストが感じ取ることができるようになりました。
1991年にはHi-Fi音声のビデオソフト、LD化に際してはドルビーサラウンドでこの音響が再現され、2010年(日本では2011年)に発売されたBlu-Ray・DVDでは「ハイビジョン・デジタル修復版」として音源を再編集し規格を上げることに成功。
オリジナル英語は7.1ch、日本語は5.1chのサラウンド・ステレオで制作され、GM規格でファンタジアの音色が登録されているなど、音響規格の変革にも貢献したファンタジアの進化は、どんどん羽ばたいていきました♪
ウォルト・ディズニーの構想した芸術性の塊
画像参照:ディズニー公式サイトより
ミッキーマウス、白雪姫、シリー・シンフォニー・・・。
数々の芸術的なアニメ作品を作り上げてもなお、ウォルトの「アニメとしての芸術」に対する探究心は衰えることがありませんでした。
そしてとうとう、彼の当時既出だった作品の中で最も完成度が高かった「白雪姫」よりもさらに高いものにすることに決め、シリー・シンフォニーの方向性を維持しつつ、より物語性のある音楽作品を作ることにしたのです。
そこで題材として持ち上げられたタイトルが、今の私たちにはなくてはならない作品「魔法使いの弟子」。
緩急ついた音楽と、ポール・デュカスによるストーリー性の強い曲長がウォルトの制作意欲に火を点け、さらに演奏する楽団や指揮者にもこだわるようになっていきます。
当時著名な指揮者だった人々の中からレオポルド・ストコフスキーの起用を考え、レストランで彼と意気投合したウォルトはついに、1937年頃から製作を開始した。
どんなことにも興味津々なウォルトは音響面にもこだわるようになり、前述のような音響技術の開発や制作にも惜しみなく時間と費用を捧げていきました。
画像参照:ディズニー公式サイトより
とはいえ、ウォルトとストコフスキーの間に何も問題がなかったわけではありません。
「魔法使いの弟子」の製作の際に、ウォルトの持ちキャラ「ミッキー」が主役に選ばれたことに対し、ストコフスキーは「ミッキーだけが目立つのはおかしい。新しいキャラクターを作ってくれないか?」と持ちかけます。
これに対しウォルトは「パントマイムだから」と力説し、最終的にミッキー主役のまま落ち着いたそうですが、ここの力説をぜひ聞いてみたかったです(^_^;)。
さらに、1年をかけた「魔法使いの弟子」が完成した時には予想以上の製作費がかかっており、一時期はさすがのウォルトもたじろいでしまうほどに膨れ上がってしまったのです。
それで諦めず、新たな試みとして「作品を音楽コンサートのような感じにする」ことを思いついたことkら、音楽評論家のディームズ・テイラー監修のもと、映画に用いるのにふさわしいクラシック音楽が8つ選ばれました。
こうして、ディズニーが予てから構想していた「芸術」の塊、ファンタジアが完成したのです。
すべてで8つのストーリーが楽しめる!「ファンタジア」お品書き
すべてのサブタイトルは、その作品で用いられている楽曲の名前で構成されています。
普段はクラシックなんて聞かない・・・という方でも安心して楽しめるので、近くのレンタルショップなんかでもぜひDVDやBlu-rayをレンタルしてみて、ぜひお聞きになってみてください!
(曲名は、wikipediaを参照しています)
1.トッカータとフーガ ニ短調
画像参照:ディズニー公式サイトより
一般的には「チャラリ~ン、鼻からぎゅ(ry」で有名なあの曲です(笑)。
指揮者のストコフスキーのバックシルエットによる印象的なスタートで始まり、序盤は奏者たちのシルエットのみで作品は進行していきます。
中盤からアニメーションに切り替わると、大空に広がる視覚的に捉えた音のハーモニーが描かれた幻想的な世界感に切り替わります。
ここを見ただけでも、いかに音に忠実にイラストが描かれているのかがよくわかる、インパクトの強いシーンですね。
2.組曲「くるみ割り人形」
画像参照:ディズニー公式サイトより
中盤で使われる楽曲はソフト○ンクのCMでもよく聞きましたよね!
一般的にはタイトル通り、くるみ割り人形の登場を想像する方も多いかもしれませんが、この作品では楽曲の世界観を大地の幻想的な映像美で描いています。
妖精たちが自然の中を飛び回り、きのこたちは湿った空間を喜び踊り、花々は水面を滑るように舞う。
自然の活き活きした描写は、見たものをその美しい映像に引き込んでいきます。
3.魔法使いの弟子
画像参照:ディズニー公式サイトより
ディズニーファンならもう説明はいらないんじゃないかな?と思うくらいの名作の登場です。
魔法を習いたいミッキーは、常に師匠から水汲みの役目を割り当てられるばかりでろくに修行もできません(後の作品ではイェン・シッドという名前になりますね)。
そんなある日、出かけた師匠の目を盗み、師匠が普段から使っている魔法を使うための帽子を勝手に使い、あれこれと思いのままに魔法をかけていきます。
しかし気をよくしすぎたミッキーは油断してしまい、どんどん取り返しのつかない方向に流されてしまいます・・・。
この作品は、続編にあたる「ファンタジア2000」でもリマスター版が使用されました。
4.春の祭典
画像参照:ディズニー公式サイトより
タイトルからは想像できない、壮大な宇宙の物語を一通りのストーリー仕立てにして進んでいく「春の祭典」
地球の誕生、生まれゆく大地、現れる様々な生物、そして滅びゆく生命と大地・・・。
私たちが生物や科学で学ぶような話が全て織り込まれてるこのシーンでは、迫力のある演奏によって裂ける大地や大津波など、幾多の表現が用いられています。
途中、恐竜同士の闘いのシーンがありますが、あそこを無駄にハッピーエンドにしなかったのは自然の教理を理解してのことなのかな?と筆者は思いましたね・・・物哀しくはありましたが^^;。
休憩
画像参照:ディズニー公式サイトより
15分間の休憩が挟まれます。
最近のディスクでは省かれていたりもしましたが、2011年版ではこのシーンは15分の休憩シーンも含めて全て収められているので紹介させていただきます。
休憩の後、シャイでおちゃめな「サウンド・トラック」くんによる劇中に使われている楽器の紹介が行われ、音が出るたびにその音を視覚的に描かれるという、ちょっとコメディチックな表現も含まれたシーンとなっています。
5.田園交響曲
画像参照:ディズニー公式サイトより
休憩終了後、一発目は大空を飛び回るペガサスたちが主人公の「田園交響曲」。
人の姿をしたユニコーンと、大空を駆け巡るペガサスたちの日常生活(?)が描かれたシーンです。
中盤からは美しいメスのケンタウロスと、勇ましいオスのケンタウロスの恋模様が描かれ、気弱なオスとメスのもどかしいやり取りが胸をキュンキュンさせます><。
個人的には、序盤に出てくる空を飛ぶのが苦手な黒いペガサスがめちゃくちゃ可愛くて、このシーンだけ何回もリピートして見たのを覚えていますヽ(*´∀`)ノ。
そのせいでビデオ、伸びちゃったんですけどね(;´д`)。
6.時の踊り
画像参照:ディズニー公式サイトより
ファンタジア作品の中では特に明るい印象の強い、バレエダンサーに見立てたフラミンゴやカバ、ワニなどのコミカルな出演者豊富な「時の踊り」。
前半はバレエの練習に勤しむフラミンゴたちが、軽快なステップを踏みながらミスをすることなく役を演じていきますが・・・主演のフラミンゴが出したフルーツで事態は一変します。
中盤からは、同じくバレエを踊るカバが登場します。
おめかしをしたカバは踊りますが、疲れ果て眠ってしまい、ゾウたちが癒しの泡を吹きます。
そこへ現れるワニの集団・・・カバの魅力に、果たして勝つことが出来るでしょうか?
7.はげ山の一夜
画像参照:ディズニー公式サイトより
このあとの「アヴェ・マリア」とストーリー・音楽・映像をすべて連結させたひとつの大きな物語になっている序章「はげ山の一夜」。
序章では、「はげ山」と呼ばれる鋭角のような山にすむ魔王が、麓の町を自身の力で覆い尽くしてしまうというお話から始まります。
街はどんどん豹変していき、次第にその街で死んだ多くの幽霊たちが呼び出され、魔王のもとへ呼び寄せられます。
斬首所、街に佇む川、愛する者のお墓や集合墓地、至る所から呼び寄せられた死霊はやがて、魔王の力によって魔物へと姿を変えます。
しかし夜明けとともに、魔物は死霊へと姿を戻し、やがて朝日が上がってきて・・・
8.アヴェ・マリア
シームレスに前編から続く「アヴェ・マリア」のシーンでは、死者たちを祀る巡礼者たちの幻想的な映像が描かれています。
このシーン、何枚も何枚もイラストを書いているように見えますが、実際には1枚のイラストに移動シーンを重ねているんだそうです。
とはいえ、これほどに息を呑む美しさは、他では味わえませんよね。